急激な円安や、ウクライナ問題などの世界的な有事問題、コロナ下のダメージの影響などで物流が滞ってしまい、物価上昇がとどまるところを知りません。また一部の大手企業は物価上昇に伴う賃金のベースアップを行っておりますが、それでも十分だとは言えません。それでも賃金がアップされている大企業はまだましな方で、多くの中小企業は据え置き又は微増が精いっぱいな状況です。その背景には、納品の代金や販売価格の見直しをすると、取引に影響を及ぼしてしまい、物価の上昇に合わせての請求が出来ず、支出が増えるけど、収益は増えない。よって社員の給与を上げる事が出来ないと、物価は明らかに上昇のカーブを描いているのに、給与は変わらないと、常識ではありえない状況なのが今の日本になります。
日本は資源に乏しい国で石油や天然ガスなどのエネルギーから、食料品など、毎日生きていく上で、必要不可欠の品目のほとんどを海外からの輸入で賄っております。ちょっとした為替の変動や、物流の影響を非常に受けやすい国です。今後の政界情勢は不鮮明ではありますが、どこかで何らかの抜本的な政策を打たないと、今以上の生活苦が続くと予想されます。
オーストラリアはと言いますと2023年に物価上昇対策として、最低賃金が時給21.38ドルから時給23.23ドルと一気に、8.7%引き上げられました。この上昇率ではまだ十分ではないと考えられ、更に2024年度は数パーセント最低賃金が引き上げられるとの予想が出ております。およそ30年間物価は上昇しているにも関わらず、賃金がほぼ変わらない日本からすれば、本当にうらやましい限りのオーストラリアですが、問題がない訳ではありません。
確かに毎年ある一定以上の賃金のベースアップが行われており、人々の生活は順風満帆に見えなくもないのですが、それ以上にすさまじい勢いで、オーストラリアの物価は上昇カーブを続けており、その上昇率はRBA(オーストラリア準備銀行、日本銀行に相当)の予想をはるかに上回る速度で、上昇し続けています。コロナウイルス蔓延時期には、オーストラリアも他の先進国と同様、金融融和政策に家事を取り、金利の利下げなどを行い国内経済の維持に努めていました。ただ今年に入りコロナ渦も収まり、世界経済もある程度上向き&回復の兆しを見せ始めているので、オーストラリアも他国の状況に合わせ得て、金利の利上げを実行しました。結果オーストラリアは異常なインフルが発生し、慌てたRBAは一時的に利上げを控える声明を出しました。
その背景にはコロナ下で利下げや量的緩和に加え、YCC(イールドカーブ・コントロール)の導入など、過去にない異例の金融緩和にかじを切った影響と、国境のゲートが開いたことで、大量の移民がオーストラリアに押し寄せ、不動産市場が急騰する状況になってしまいました。不動産市場異常な急騰は、物価にも影響を与えこちらも異常な上昇率となり、景気が停滞しているにもかかわらず、物価が持続的に上昇することを意味するスタグフレーションが懸念されております。
このインフレ率を抑えるために、再度金利を引き上げる政策を行うなど、RBAも声明が二転三転しており、迷走感は否めません。
過去にもオーストラリア経済がアンコントロールな状態になったときに、チャイナマネー特需で切り抜けた事がありました。政府筋でも今回もチャイナマネーを期待している節がありますが、その大元である中国も景気低迷を続けており、今後オーストラリア経済がどうなるか混沌が続く可能性が高いと思われます。