ロシアが隣国ウクライナに攻め込みました。

ウクライナは旧ソビエト連邦の一部で、ソビエト崩壊後に分裂、独立した国の一つです。

独立当初は旧ソビエト連邦の衛星国として、ロシアとも西側諸国ともタイトロープ的な側面は否めませんでしたが、良い意味でバランスが取れており、どちらの陣営とも比較的良好な関係を築いておりました。

ただ近年はプーチン大統領の強引な旧ソビエト時代の領土奪還路線もあり、母国の安全保障観点からロシアよりも西側諸国にバランスをシフトした感はありました。

当然このような動きは剛腕プーチン大統領にとって決して好ましい流れではなく、前々から噂はありましたが、今回はとうとう最終的な武力によるウクライナ進行と言う決断をしました。

戦争勃発や自然災害発生後には、財産として古今東西不変の価値を誇る金と、原油などの資源が高騰するのは至極当然で、資源の大半を海外からの輸入で賄っている日本は、その余波をもろに受けている状態です。

世界的な観点からみますと、脱炭素化、カーボンニュートラル、温暖化阻止など、地球環境を第一に考える潮流が存在します。

欧州では2035年までにガソリン自動車の販売を廃止し、2050年までにCO2排出ゼロを目指す包括案が採択されました。

また欧州では化石化エネルギーを利用した発電から、風力、太陽光、天然ガスなどを利用した地球にやさしいエネルギーにシフトしています。

そのシフトは地球温暖化を考えた環境面だけではなく、OPEC加盟国が多く存在し、紛争の火種を抱えている石油産出国が軒を連ねている中東に、自国のエネルギー供給をゆだねるリスクヘッジの側面もあります。

欧州は陸続きなので、天然ガスが豊富に産出するロシアからパイプライン「ノルドストリーム1」を引き、欧州へ安定供給が可能になりました。

タンカーに原油を積み込み、ペルシャ湾から輸送するよりも、パイプラインで天然ガスを送った方が、平時には安全かつ低コストでエネルギー入手が可能です。

結果ロシアからの天然ガスは欧州のエネルギー需要量の60%を賄う状況までシェアを広げる事になりました。

重複しますが平時ならばこの状態は問題ありませんが、今回の様に有事になった場合には、リスクが上昇します。しかも輸入元が戦争の当事者であればなおさらです。

リスクヘッジのために、中東の石油輸入から天然ガスにシフトしたのですが、その天然ガスの輸入先を一か国に集中してしまった。残念ながら本末転倒の結果と言えます。

経済制裁を実行し、ロシアからの資源輸入を抑えれば、国内のエネルギーを賄うために、その補填分をどこからか調達しなくてはなりません。これが現在のエネルギー資源連日高騰の大きな理由になります。

日本も欧州の大半の国と同様に、エネルギー資源の多くを海外からの輸入に頼ってます。

過去の歴史を紐解くと、中東戦争勃発後オイルショックが日本を襲い、トイレットペーパーの買い占め騒動などが発生しました。

その後石油の輸入先を中東一極にするのはリスクが高い事から、インドネシア、ベネズエラなど中東諸国以外の国からも石油輸入を実施。

風力水力、原子力などの石油に依存しないエネルギーを求める政策がスタートしたのもこの時期からでした。

ある程度安定したエネルギー供給時代が続きましたが、東日本大震災後、原子力=悪の世論もあり、それまで2~3割日本のエネルギー需要を支えていた原子力発電は脱落しました。

その不足分を補おうと、石油、石炭、天然ガスを諸外国から買い求めようとしましたが、足元を見られ、震災前と比べてはるかに高額な値段で輸入せざるを得ない状態が今の日本です。

原子力は人間がコントロールするには大きすぎる相手で、戦争紛争時には相手国から攻撃の第一ターゲットにされる可能性が高い施設です。ただ現時点で全くゼロにするのは、今の欧州の姿を見ていると、これはこれでリスクが高いと言えます。 

多額の予算を献上し多くの研究データーを産み出した高速増殖炉もんじゅは廃炉が決定しました。

その決定は致し方がない事ですが、アメリカは高速増殖炉建設を決定し、その施設に日本も参加しますが、日本が長年蓄積してきたデーターを供給するのが前提となっております。

少し乱暴な言い方になりますが、日本が原子力開発の歩みを止めても、世界のどこかで原子力の開発は続けられてます。

苦労したノウハウデーターをただで国外に取られるのであれば、国内での開発を継続する。日本国内のエネルギー安定供給の観点から考えて、そのような選択肢があっても良いのではと言えます。