オーストラリアで就職する。こんな目標を持っている人はかなりの数に上ります。でも残念ながら全員が全員、希望通り海外で働けるわけではありません。
私の手元に一つ面白いデーターがあります。私の社内には人材部門があり、「日本からオーストラリアに就職したい」 そんな問い合わせがどのくらいあったのか、月別、年別で集計しています。それによると、日本の景気が悪化したり、求人倍率が落ちれば落ちるほど、それに反比例して 「オーストラリアで働きたい」 希望者の数が激増します。
これらの理由として、日本で就職先がなく、先が見えない。だから海外でどうにかならないか。環境を変えたい、などの声を多く聞きます。オーストラリアの状況を教えてほしいと言われれば、私も過去に苦労した人間なので、判ることはできるだけ包み隠さずに伝えています。ただ、こちらの状況を説明すると、そんなに大変で難しいのですかと驚かれ、ほとんどの方がそこで諦めてしまいます。
厳しい言い方で恐縮ですが、海外での仕事探しは日本の3倍は大変だと思ったほうがよいです。日本で就職できないのであれば、海外での就職のチャンスはほぼ無いに等しいです。「日本がダメでも、海外があるさ」 そんな安易な考えでは夢を手に入れることはできません。
【海外で必要なのは運】
どんな人が海外で就職するチャンスがあるのか。一番必要なものは何か。海外で就職を希望する方々から質問を受けます。「語学力がネイティブと同等。資格、職歴共に問題なし。さらに特殊技能まで持っている」 こんな人であれば、オーストラリアに限らず、アメリカだろうが、ヨーロッパだろうが引く手数多。何の心配もなく就労ビザのサポートを受けることができるでしょう。
でもこんな人は本当に一握りの人たちだけの話で、私も含めてほとんどの人は、「誰と競り合っても負けないズバ抜けた力」 などありません。そして実際には、海外で働いている人は、ズバ抜けた能力の持ち主ばかりではありません。
では、語学力、職歴、特殊技能も大事ですが、一番の決め手となるのは何か。ずばりそれは運!!これを聞いてしまうと、「な~んだ。身も蓋もない話だ」 とお叱りを受けてしまうかもしれませんが、私が言いたい運とは、人事を尽くして天命を待つほうの運を指し、棚から牡丹餅的な発想の運とは異なります。
【行動力で運をつかみ取る】
オーストラリアでの就職活動は、徹底的に市場調査を行う必要があります。昔に比べてインターネットの発達で、いつでも好きな時に情報を拾い上げることが可能になりました。それを利用して、現在の雇用市場、政府の方針、外国人の受け入れ推進状況、どのような職種の需要があるのかなどを調べる必要があります。
また、以前は自分の履歴書を企業に送付するのには、郵送又は手渡し以外の方法はありませんでしたが、今はE-mailという便利なものがあるので、履歴書送付もだいぶん楽になりました。でも、企業側も何百人という人から同様な方法で履歴書を受けるので、よほど目に引く経歴でないと返事をもらえる可能性は低いです。
ではどうしたら可能性が広がるのか。それはやはりオーストラリアに乗り込み、企業とアポを取り付け、直接自分を売り込む方法が最も相手にインパクトを与えるでしょう。現に一部の例外を除いては、大抵の人がこの方法でチャンスを手に入れています。当然、渡航費、滞在費は実費で、金銭的な負担も少なくありません。
またこれだけの行動を起こしたとしても結果が伴わない場合があります。いやむしろ自分が想い描くような結果を得られるほうが少ないと言えます。でもこれらはやりすぎではなく、当たり前の話になります。ここまでやって初めて、やるべきことをやった。後は運を待とうと言えるのです。
【チャンスが多い職業】
日本に国内での需要が多い職業があるように、オーストラリアでも、需要が多い職業は存在します。それと同時に考慮しなくてはいけない点は、自分の長所、短所を理解することです。日本と何の関係もない企業に応募したとしても、恐らくそこから発展はないでしょう。なぜなら、彼らは日本人を採用するメリットが全く無いうえに、こちらは競争相手となるオーストラリア人と同等の英語力を求められるからです。
しかもオーストラリアは少々閉鎖的な考えを持っている国で、ローカルエクスペリエンス(オーストラリア国内での職歴) を求める場合が多いからです。最初のステップとしては、日本と関連がある企業で経験を積み、その後に現地企業へ挑戦する。これが手堅い方法と言えます。
また、以前のオーストラリアは観光立国でしたので、日本からの観光客も多く、旅行業関連の求人が目に付きました。ローカルエクスペリエンスがなくても、旅行業界の経験が日本で3年以上あれば、就労ビザのサポート付きで仕事が得られました。ただ現在は残念ながら旅行業界はオーストラリアでは完全に斜陽産業になってしまい、オーストラリアで働きたい日本人の受け皿的存在ではなくなってしまいました。
旅行業に代わって、オーストラリアの根強い景気に支えられ、外食産業がここ数年飛躍的な伸びを続けています。特に和食はもう海外での市民権を得たといっても過言ではないので、日本食レストランのマネジャー職、板前などは、年中人手不足のポジション。これらの業界で仕事に従事していた人は、すぐにでも仕事が見つかる可能性が大です。
また、オーストラリアは絶対的に技術者が不足しています。水道、配管などの水周り関係の仕事、電気機器の修理、設置業務、日本の国土の20倍もの面積を支えている自動車関連の技術者も常に人手不足です。前回触れたIT関連も同様です。
実際にあった例ですが、英語力があまりないワーキングホリデービザの方で、IT関係のスペシャリストがいました。ダメもとで、日本語環境のない、完全な現地企業に応募し、とんとん拍子で話が進み、見事採用が決まりました。
本人はワーキングホリデービザで就労が許される6ヶ月間だけ働ければいいかなと考えていたようですが、その方の能力が認められたらしく、会社側から 「このまま残ってくれ。就労ビザのサポートはするから」 と言われました。給与を聞くとその金額にびっくり! 私が初めて就労ビザをサポートしてもらった時の金額とは雲泥の差でした。技術職の力をまざまざと見せ付けられた次第です。
ただ本人は、ビザを取得してさらに4年間もオーストラリアに滞在する決心はまだ付いておらず、回答を保留にしています。オーストラリアで何とかして仕事を見つけたいと思っている人には、なんとも歯がゆい感じでしょう。ともかく、語学が堪能でなくても、万国共通の資格やスキルがあれば、オーストラリアでの就職も可能性があります。