今年の夏は、満を持して夏季オリンピックでは2度目の開催となる東京オリンピックが行われる予定でしたが、コロナウイルスの影響もあり、残念ながら2021年に延期となってしまいました。
コロナウイルスは有効なワクチンがないため、まだまだその猛威が収まる気配もなく、最悪の場合には、折角50年ぶりに日本で開催されるオリンピックが中止になる可能性も出てきております。
地元開催となるとホームアドバンテージも有り、日本に限らずどの国も他国開催時に比べメダル獲得数が増加します。
欧米人に比べ、筋肉量が劣る日本人は、中々成果を上げるのが厳しい種目も多いのですが、スポーツ大国オーストラリアはまんべんなく成果を上げ、その人口比率に比べてメダル獲得数はトップクラスの数字をたたき出しています。
特にオーストラリアは世界有数のビーチを有していることもあり海関係の競技が強く、お家芸の水泳を筆頭に、ボート、カヤック、カヌー関係でメダルを量産しました。また自転車競技もメダル獲得のお家芸で、少し郊外を車で走らせると、至るところに、ロードレース仕様の自転車をこいでいる人の姿を見かけます。
平日の早朝でも、公園などには走り込みをしている人も多く、24時間オープンのジムは 「誰が使うんだろう」 と最初は思っていましたが、走り込みを終えた人がそのままジムに直行し、ここでシャワーを浴びて、そのまま会社に出勤する人もかなりいます。ラグビー人気は言うに及ばず。近年はサッカーも人気が上がっており、週末ともなると、あちらこちらのサッカーグラウンドで草サッカーの試合も開催されています。
人口は東京都と同じくらいですが、市民レベルでスポーツに対する関心、理解力が高い点が、オーストラリアがスポーツ大国に育ち上がった理由と言えます。
【優れた環境を活かした斡旋ビジネスの可能性】
オーストラリアは政府が音頭を取り、すでに70年代に、国立スポーツセンターとそれに併設する研究所を設立しています。日本はそれから遅れること20年後にやっと、同様の施設が、しかも、まさにオーストラリアの国立スポーツセンターを手本にして設立されました。
オーストラリアにはスポーツをする際の自然条件に恵まれた、広大な土地が広がっています。草ラグビーや草サッカーのレベルでも、きちんと芝の生えたグラウンドで試合や練習をするのが普通です。また、日本と季節が逆なので、日本では寒くて怪我をしやすい冬に、暖かいところで体を作ることができます。私はこれらの条件から、日本からスポーツ留学や遠征試合、合宿交流を斡旋するビジネスのチャンスがあるとにらんでいます。
これはすでにやられている方がいるかもしれませんが、その方たちには先見の明はあっても、実際に現地チームとの対抗試合をアレンジできるコネクションがなかったり、利用者目線でのフォローが足りなかったりで 「次回もオーストラリアに来よう」 という気持ちを持たせられていない点が、これらのスポーツ関連ビジネスが定着しない理由ではないかと私は考えています。
スポーツをする環境は世界有数なので、参加者にまたオーストラリアに来たいと思わせるスポーツプログラムを構築できれば、ビジネスチャンスが大だと言えます。
【「JリーグよりもAリーグ」という発想】
少し前の話になりますが、ユベントスに所属していたイタリアの至宝デル・ピエーロ選手が、オーストラリアAリーグ所属のシドニーFCに移籍することが発表されました。
Aリーグは、レベル自体はそれほど高くないのですが、有名どころの選手がキャリアの晩年を過ごすことが意外と多く、ドワイト・ヨークやロマーリオなども所属していました。日本選手ではあのキング・カズもシドニーFCに所属していたことがあります。温暖で過ごしやすい気候が若い選手よりも体のケアが必要な彼らにとって、魅力だったのかもしれません。また、あの悲劇の天才プレイヤーで、私も大好きな小野伸二選手が、シドニー西部パラマタに本拠地を構えるワンダラーズに入団したのは、個人的に非常に興奮するグッドニュースでした。
サッカーの他、ラグビーも有望です。オーストラリアラグビーリーグのレベルは世界トップクラスです。日本からも、日本ラグビー界を担う選手が、オーストラリアへラグビー留学に訪れています。
日本サッカーのレベルが年々上がっているのは喜ばしいことです。私見では、Jリーグは世界的に見れば上位に入るレベルの高さのリーグです。ただ、日本では上位一握りの選手しか経済的な成功は得られないのが残念なところです。しかし、オーストラリアなら、実力さえあれば、日本よりも成功するチャンスに恵まれると思います。彼らにAリーグでプレーするチャンスを与えるビジネスは、需要と供給がマッチした、成功率の高いビジネスだと言えます。
具体的には、入団テストのアレンジや、渡航の一切合切のアレンジなどを行なうビジネスモデルを構築するのはどうでしょうか。
オーストラリアには幸運なことにワーキングホリデー制度があるので、合法的に試合に出場することも可能ですし、長期滞在もできます。1週間程度の入団テストでは結果が出なければ、ワーキングホリデー制度を利用して継続的なアプローチを取ることも可能です。またオーストラリアは英語圏ですので、サッカーに加えて語学力を磨くことももちろんできます。グローバル化の時代、引退してからの食い扶持のことを考えると、本業の競技以外に語学力も身に付けられる環境は、彼らにとって魅力的であるはずです。
サッカーはあくまでも一例ですが、オーストラリアがスポーツ大国であり、スポーツに適した広大な大地と自然と、スポーツビジネスや文化に対する市民レベルでの深い理解があることには変わりありません。選手にとっても事業者にとっても、考えようによっては、日本よりも、成功のためのパイがずっと大きいかもしれないのです。