今年は天候の影響があり、農作物の収穫に大きな影響を与えております。特に異常とも言える酷暑が続きました。 その割には定期的な雨が降らずに、一部では田園が干上がってしまい、大変な状況が続きました。 農作物にとっての適切な雨量が少なかった半面、災害を引き起こす集中的な豪雨が多く、雨量のバランスが非常に悪いのが今年の天候の特徴です。 その様な傾向もあり全体的に農作物の収穫量が15~20%くらい落ちる見込みだとのレポートもあります。 またマスメディア等が過剰とも言える米不足を放送したために、関東や関西などの大都市圏では店頭に米がない、令和の米不足がクローズアップされております。 今月くらいから各地で米の収穫が始まるので、落ち着きを取り戻すとの予想もありますが、不安定な気候変動は今後も農作物に深刻な影響を与えそうです。
オーストラリアはご存じ方も多いと思いますが、資源や農作物を海外に輸出する資源大国です。小麦、大麦、大豆、トウモロコシなど、人間が口にする食物の原材料の他にも、家畜などの餌となる飼料になります。 これらの穀物の他に米もオーストラリアで生産しておりますが、他の穀物に比べて生産農家や生産量はそれほど多いとは言えません。
オーストラリアでは現在2,000戸ほどで、生産量はその年によって異なりますが、およそ100万トンになります。ただ1ヘクタールあたりの収穫量は8~9トンで、世界でも有数の高水準の収穫率を誇ります。 そのうちおよそ60~70%が輸出され、その多くは日本を含むアジア諸国に輸出されております。 世界的な食糧不足、人口増加、気候変動の影響で今後ますますオーストラリア産の米の輸出は需要が高まると予想されますが、生産量を大幅に増やすことには様々な問題をクリアーする必要があります。
- 水資源の不足米の栽培には大量の水が必要ですが、オーストラリアは一部の沿岸部を除けば、雨量の乏しい乾燥した大地の国です。 特に干ばつが頻発する地域では水資源の不足が深刻な問題です。 ニューサウスウェールズ州やビクトリア州の米生産地域は、灌漑に依存しているため、水供給が不安定になると米生産に大きな影響が出ます。2018年から2019年の干ばつは、米生産量を大幅に減少させました。
- 気候変動の影響
気候変動は、オーストラリアの米生産に大きな影響を与えております。平均気温の上昇、降水パターンの変化、そして極端な気象災害の増加は、米の栽培にとって重大な課題です。 特に温暖化に伴う気温の上昇は、米の生育に悪影響を与え、収量や品質の低下を招く可能性があります。
- 環境への影響
米栽培は大量の水を必要とし、そのための灌漑は河川や地下水の枯渇につながることがあります。また、田んぼからのメタンガス排出や農薬・化学肥料の使用は、温室効果ガスの増加や水質汚染を引き起こす可能性があります。これに対して、環境負荷を軽減するための持続可能な農業技術の導入が求められていますが、これにはコストがかかるため、すべての農家がすぐに実践できるわけではありません。
- 経済的課題
オーストラリアの米農家は、国際市場での価格競争に直面してます。特にアジアやインド亜大陸などの米生産国からの安価な米が市場に出回る中で、オーストラリア産の米の価格が高くなり、競争力を失うリスクがあります。また、干ばつ時の生産量減少や水のコスト増加が、農家の収益性を圧迫しています。
- 農業技術と投資の必要性
効率的な水利用や環境に優しい農業技術を導入するには、農業機械の更新や新しい技術への投資が必要です。しかし、特に小規模な農家にとっては、これらの投資を行う余裕がない場合があります。また、技術の導入には教育や研修が必要であり、農業従事者のスキルアップが求められます。
- 持続可能性と政策の不確実性
政府の農業政策や水資源管理政策の変更は、米生産に直接影響を与えることがあります。政策が頻繁に変わると、農家は長期的な計画を立てにくくなり、持続可能な生産体制を確立することが難しくなります。
これらの課題に対処するためには、農業技術の進展や持続可能な水資源管理、そして政府の支援が不可欠と言えます。