日本ではかなり前から少子高齢化が問題視され、政府や各自治体など人口を増やす試みをしていますが、残念ながら今の所それらの政策が有効かつ効果的ではないのが現状です。ただこれは日本だけの問題ではなく、いわゆる先進国と呼ばれる国々が抱える問題です。 地球規模で考えると発展途上国での爆発的な人口増加の影響もあり、地球が共用できる限界人口およそ100億人ですが、その限界値が2050年頃に訪れると予想されています。
日々の暮らしや、毎日の食事も事欠けながら人口増加の傾向がある発展途上国があれば、逆に日々の暮らしが比較的安定している先進国では消費高齢化が進んでおり、何とも皮肉な感じになっております。
オーストラリアも他の先進国同様に高齢化が進行しています。これにより、労働力市場や社会保障制度、医療サービスなどに影響が生じています。

高齢者雇用の状況

 オーストラリアの高齢者の雇用と就労は、近年、増加傾向にあります。2023年のデータによると、65歳以上の労働力率は15.7%で、10年前の12.3%から3.4ポイント上昇しています。

この増加には、いくつかの要因が考えられます。

高齢者年金の支給開始年齢の引き上げ
スーパーアニュエーション(確定拠出年金)制度の導入
高齢者の健康状態の改善
高齢者年金の支給開始年齢は、2009年の労働党政権による改革により、2024年までに67歳に引き上げられることになりました。これは、高齢者の労働参加を促進し、社会保障費の抑制を図るためのものです。

スーパーアニュエーション制度は、1992年に導入された強制加入の確定拠出年金制度です。この制度により、高齢者は退職後に受け取る年金の一部を自分で運用できるようになり、退職後の生活に備えることができます。

高齢者の健康状態は、近年、改善傾向にあります。これは、医療技術の進歩や健康意識の高まりによるものです。健康状態の改善により、高齢者もより長く働けるようになりました。

オーストラリア政府は、高齢者の労働参加を促進するため、以下の政策を実施しています。

高齢者年金の受給要件を緩和する
高齢者向けの職業訓練の機会を増やす
高齢者雇用を促進する企業への支援を行う
今後も、オーストラリアの高齢者の労働参加は、さらに増加していくと予想されます。

高齢者の労働参加が拡大することによって、オーストラリア経済にもさまざまなメリットがあります。

労働力不足の解消
社会保障費の抑制
経済成長の促進
高齢者の労働力は、労働力不足の解消に貢献します。オーストラリアでは、出生率の低下や移民の減少により、労働力不足が懸念されています。高齢者の労働参加が拡大すれば、この問題の解消につながります。

また、高齢者の労働参加は、社会保障費の抑制にもつながります。高齢者年金の支給開始年齢の引き上げにより、高齢者が受け取る年金の総額は減少します。高齢者が労働に参加することで、さらに年金の支給額を抑えることができます。

さらに、高齢者の労働参加は、経済成長の促進にもつながります。高齢者の労働力は、新たな消費需要を生み出し、経済を活性化させます。

ただし、高齢者の労働参加には、いくつかの課題もあります。

健康状態の悪化
デジタルスキルの不足
雇用主の偏見
高齢者は、若者と比べて健康状態が悪化する傾向があります。そのため、高齢者が長く働き続けるためには、健康管理や予防医療の充実が重要です。

また、デジタル化が進む現代においては、デジタルスキルの不足が問題となっています。高齢者は、若者と比べてデジタルスキルが不足している傾向があります。そのため、高齢者がデジタルスキルを身につける機会を増やすことが重要です。

さらに、雇用主の中には、高齢者を採用することに偏見を持っている人もいます。そのため、雇用主に対する高齢者雇用に対する理解の促進が重要です。

オーストラリア政府は、これらの課題を克服するため、以下の取り組みを行っています。

高齢者向けの健康管理や予防医療の充実
高齢者向けのデジタルスキル教育の充実
高齢者雇用に対する雇用主の理解促進

その他にも労働市場の変化に適応することや、健康状態が雇用に影響を与えることなど、高齢者が働き続けるための課題も存在します。一部の高齢者は新たな職業に挑戦するために職業訓練や再教育を必要とし、そのためのプログラムや助成金の提供が求められています。また、雇用保険や再就職支援が高齢者が雇用を失った場合に経済的な安定感を提供し、新たな雇用機会を見つけやすくする重要な要素です。

さらに、雇用主の意識向上や労働環境の改善が必要です。高齢者の経験や知識は企業にとって重要な資産であるため、雇用主が積極的に高齢者を採用する姿勢が求められています。労働環境においては、バリアフリーな職場や適切な労働条件の確保が、高齢者が働き続けやすくなるために重要です。

オーストラリアでは、これらの課題に対処するための様々な政府の取り組みや非営利団体のプログラムが進行中です。高齢者雇用支援のための取り組みが強化される中、将来的には労働市場における高齢者の地位向上や雇用機会の拡大が期待されます。社会全体での協力が不可欠であり、高齢者が経済的・社会的な安定感を持ち、質の高い生活を維持できるような取り組みが求められています。
今後も、オーストラリア政府は、高齢者の労働参加を促進するための取り組みを継続していくことが予想されます。