2025年5月3日に実施されたオーストラリア連邦総選挙は、政治史に残る一つの転機となりました。アンソニー・アルバニージ首相率いる労働党(ALP)は衆議院で94議席を獲得し、単独過半数を確保。これは現行制度下において歴代最多レベルの議席数になります。事前の世論調査では労働党は世論調査では僅差・過半数割れの懸念もありましたが、実際にふたを開けてみれば、歴史的な議席の獲得と単独政権を実現と言う労働党の圧勝に終わりました。
オーストラリアはアメリカやイギリスと同様に労働党と自由国民連合の2大政党があり、常に旗振りの様に、この2大政党間を行ったり来たりしております。また選挙となると今回の様な党首落選及びダブルスコアーを付けられる様な結果ではなく、数議席程度で政権を担うケースや、どちらの政党も過半数に届かずに、その他の政党を巻き込んで連合と言う形で与党になるケースがほとんどでした。
圧勝の背景と要因
1. 経済と生活費問題への対応が評価された
労働党は物価高騰や生活費の上昇に対して、電気料金補助・医療費補助・保育費負担軽減などの政策を打ち出し、実行してきました。
多くの有権者は「まだ完全ではないが、一定の成果が出ている」と評価し、継続性を求めました。
一方で野党は明確な経済政策を提示できず、「政権を託せない」という印象を与えました。
2. 都市部・若年層での強い支持
労働党はメルボルン、シドニー、ブリスベンなどの都市部で圧倒的な票を獲得しました。
特に住宅・家賃問題や教育・医療に関心の高い20〜40代の支持が集中。
グリーンズの支持層も、気候変動政策の類似性から労働党に吸収されました。
3. 首相アルバニージの「穏健」なリーダーシップ
アルバニージ首相は対話的で地道なスタイルの政治家であり、党内の急進的勢力を抑えつつ、中道路線を維持しました。
2022年の政権奪取後、スキャンダルが少なく安定的な政権運営が印象づけられたことも信頼につながりました。
4. 野党の失速と党首ダットン氏の敗北
自由党のピーター・ダットン氏は保守色が強く、「国民の共感を得られなかった」「時代遅れ」との批判がありました。
特にLGBTQ+、移民政策、安全保障などで強硬姿勢が目立ち、都市部や若年層の反発を招きました。
さらに、自身の選挙区ディクソンで敗北したことで、野党は壊滅的な打撃を受けました。
5. 選挙戦術とメディア対応の巧みさ
労働党は選挙運動中、SNSや草の根キャンペーンを活用し、従来よりも若年層・多文化層への浸透力を高めました。
対照的に、野党はネガティブキャンペーンに頼る場面が多く、効果が薄かったとの指摘があります。
最終的に労働党は衆議院で**94議席(150議席中)**を獲得し、単独過半数を確保。これは現行体制下での過去最多の議席数であり、有権者が「改革の継続」を強く求めていることを示す結果と評価されたと言えます。