我々が日本以外の国、外国に渡航する際には、基本的にビザというものが必要になります。細かく分けるとそれこそ何千種類ものビザが存在します。ビザはその渡航目的によって、それに応じたビザを取得する必要があります。
オーストラリアの場合には、観光目的の観光ビザ(ETAS)、就学目的なら学生ビザ(Student VISA )、就労目的なら就労ビザ(Business VISA)が必要になります。
この他にも、オーストラリアには30歳までに申請すれば観光と就学、それに就労も経験できる素晴らしいビザ!ワーキングホリデーがあります。これらは期限付きでオーストラリアに滞在できるビザなので、条件さえ満たせば比較的容易に取得できます。
もし 「ずーっとオーストラリアで仕事をしたい、在住したい」 と希望するならば、ビザではなく永住権か市民権を得る必要があります。しかし、市民権の取得はオーストラリア国籍を選択することになり、二重国籍を認めていない日本の法制では、それは自動的に日本人ではなくなることを意味しています。
そのため、現実的には市民権を選択する日本人は少ないようです。
国際的に恵まれた日本人はビザに疎い
このように見てくると、実際のところ、ビザという言葉を聞いてはたして何人の日本人が正確な意味を理解しているのだろうと考える時があります。
一部の海外居住者を除けば、恐らく日本人は世界で一番ビザに対しては無頓着というか、ビザと言われてもぴんとこない国民なのかもしれません。
私も今でこそ、永住権を取得してオーストラリアになんら制限なく居住できる権限を得ましたが、この永住権なるものを取得するまでは、それはそれは血を吐く思いでした。永住権取得までの経緯や、苦しんでいる私の状態を日本の知人、友人に伝えると、皆が口をそろえて 「それは大変だね」 「がんばってね」 などなど励ましの声を掛けてくれましたが、ビザを取るのに具体的に「今こんな問題を抱えている」と話すと 「はあ~???」 クエスチョンマークが3つくらい並んだ声を上げられてしまいました。
なぜか?それは日本人があまりにも恵まれた環境にいるからです。日本人は世界で一番ビザに無頓着な国民と言いましたが、それは日本の恵まれた環境が影響しているようです。
戦前の日本は貧しい農業国でしたので、農家の二男、三男は親から譲り受けられる土地はなく、食べていく手段として、海外への移民を選択した人々も多くいました。ただ、今の日本では、私を含めて 「日本国内で食べていけない。だから海外に移住した」 そんな理由の人は皆無です。
また、日本人が海外に旅行に行く時には、ほとんどの国で、ある一定期間(3ヶ月~6ヶ月)であれば特に観光ビザを取得する必要がなく、必要だとしても、簡単な事務的処理で支給されます。
ビザの壁――「国を代表しているのに?」
これがたとえば中国国籍になると、手続きが容易ではありません。
我々がヨーロッパのとある都市に旅行に行くとします。その都市は残念ながら日本から直行便が乗り入れておらず、どこかの大都市でトランジットをしてから目的地に向かいました。この場合、我々日本人は特にビザを取る必要がなく、極端な話パスポートを保持していればスルーパスです。
しかし中国国籍の人の場合には、最終目的地の国に入国するためのビザの他に、わずか2~3時間しか滞在しないトランジット目的であったとしても、トランジットビザを要求される場合があります。計2回、しちめんどくさい申請書に必要事項を記入し、滞在日数や目的など事細かく明記しなくてはなりません。
また、帰国時の航空券も保持していないとビザが発給されない場合もあります。私の中国人の知人はとある研究施設から招聘状をもらい、国際学会へ参加する目的で入国しようとしましたが、ビザを申請しても許可が下りず、結局学会に出席することができませんでした。
当時の国際情勢など、上のほうでごちゃごちゃした関係があったとはいえ、民間ではなく国を代表する研究機関からの招聘状を持っていてもビザが下りなかった経緯を聞いた時は、正直かなり驚き&日本人に生まれてよかった!と実感した瞬間です。
次回はもう少しビザを掘り下げて書き進めます。