ある企業のリサーチを行った結果30年前、つまり日本のバブル期の給与と30年後の現在の給与を比べたところ、圧倒的に現在の給与が安くかったと驚くべき結果が出ています。 この30年間で物価が下がっていればそれも致し方ない部分ですが、物価は確実に上昇しているので、正直どの様に日本人は生活しているのか?と外国人はクエスチョンマークがいくつも付いてしまう事でしょう。

 ウクライナ問題からの世界的な資源不足と物価上昇を踏まえて、政府もやっと重い腰を上げました。 政府の要求を受けて主だった企業は賃金のベースアップを打ち出しましたが、それは一部の大企業の話しで、日本企業の全体数の99.7%を占めていると言われる、中小企業の大半は給与のベースアップが困難な状況になっております。

 その背景には、日本独自の文化(悪習)があると考えられます。 例えば海外であればフィナンシャルイヤー(年度末)後の新年には、当たり前のように公共料金や家賃などが上がり、それに伴って、取引先への請求金額もしれ~っと増額を行います。 それは悪ではなく当然の権利で、料金の交渉はあるかもしれませんが、ある程度のところで折り合いをつけるのが、海外でのやり方です。
ただ日本となりますと、取引先へ物価上昇に伴って請求金額を増額してしまうと、即座にクレーム&取引中止の可能性が高まってしまいます。 これは取引先が大手であればあるほど、この様な傾向が強く、日本企業の大半を占める中小企業の従業員に対する給与のベースアップが実行できない大きな理由の一つとなっております。

 日本企業の内部留保はおよそ516兆円と言われ、その大半は売り上げ高10億円以上の大企業の内部留保で、日本の国家予算は110兆円ですから、その約5倍もの内部留保を保持している計算になります。
 ビジネスは商材を買う側も売る側もウィンウィンの=コンディションが原則ですが、日本ではこの原則が大きく買う側に振れており、企業努力ではなく誰かの犠牲によって成り立っている悪習を変えないことには政府がいくら企業に要望したとしても、笛吹けど踊らず状態が続くことになると予想されます。

 オーストラリアでは2022年に前年度対比で5.2%引き上げられて、21.38ドルとなりました。これにスーパーアニュエーションと呼ばれる年金(9.5%)を企業側が負担するので、日本円で時給2,500円が最低賃金と言う計算になります。ただこれはあくまでも最低賃金なので、ローカルの人間にとっては金額的にあまり魅力のある金額ではないので、学生ビザやワーキングホリデービザなど、一時滞在ビザの人達がこの待遇で働くことが多い様です。

 かつて日本の農家の次男三男を中心に国内では食べていけない人達が、職を求めて海を渡った時代がありました。 バブル期には日の沈まぬ国ともてはやされた日本ですが、賃金のベースアップどころか、30年前の給与よりも下がっている業種もあるくらいです。 これからの未来を担い若者の中でも、能力が高く情報収集にも長けている人材が日本に見切りをつけて、海を渡り現地で働き日本では得ることが出来ない大金を手にしている話もちらほら出始めています。 海外との賃金格差を埋めることがこれからの日本経済の急務であり大きな問題点になります。