前回から取り上げてきた、国際公用語でもある英語を学び向上させることが、ビジネス成功への必要不可欠の要素か、というテーマを掘り下げていきます。

言葉は、自分の意思を伝えたり、相手の意図を理解するためのコミュニケーションという大きな枠組みの一部であり、交渉事などが発生するビジネスの世界では必須アイテムになります。よって問いへの答えは 「イエス」 ですが、現在日本社会で用いられている、盲目的にTOEICなどの英語検定で点数を取る語学力の訓練(スキル)には、クエスチョンマークがついてしまいます。

極論になりますが、英語に限らず語学は、その言語が使用されている国に生まれれば、自ずとネイティブスピーカーになれます。純粋な英語力といわれれば、20年以上もオーストラリアに住んでいる私よりも、オーストラリアに生まれた10歳の子供のほうが優れていると言わざるを得ません。

では、英語のネイティブスピーカーが優れている子供がビジネスの商談ができるかと問われれば、こちらの答えは 「ノー」 です。更に英語のネイティブスピーカーが全員、優秀なビジネスマンかとの回答も同様に「ノー」になります。海外でのビジネス成功には語学力が必要不可欠と一概に言われていますが、これは間違いです。冒頭でも述べていますが、語学力はコミュニケーションという大きな枠組みの、ほんの一部でしかないのです。

語学力とは一体何や?

「語学力がある」 とは、お互い理解しあえる言語で、意思疎通などのコミュニケーションを図れることですが、ただ話せれば良いというものではありません。先ほどから述べているとおり、言葉が話せればビジネスが成功するのであれば、誰でも優秀なビジネスマンになれます。相手を説得又は納得させる知識と、話術、それにユーモアも含めたトータル的なものが、私の考える語学力です。その他にも、応用力、現地やコミュニティーに溶け込む、環境適応能力なども含めて、コミュニケーション力と表現出来ます。
 
インターネットの飛躍的普及に伴い、今後ますますコミュニケーション力が問われてくると予想されます。我々も日常的に利用しているEメールですが、表情やしぐさなどが使えず、文面だけで表現するEメールで、完全な意思疎通を図るのは非常に難しいと言えます。自分の考えを相手に伝えるのは思いのほか困難な作業で、顔を突き合わせた段階でも、5割伝われば良い方だと言われています。電話だと更に伝達力が下がり、Eメールだと数パーセントしか伝わらないというデータもあります。

ビジネスの成功はいかにコミュニケーションを図るかだと言っても過言ではなく、コミュニケーションの伝達数値は、「直接会う>電話>Eメール」の順になります。直接顔を突き合わせて話すのが最良なのは言うまでもありませんが、海外とのビジネスを模索する上で、直接的なコミュニケーションが可能であるばかりではありません。補足ツールであるEメールの有効活用が海外でのビジネスを行う上で、切っては切れないものとなってます。 

実際にあった話ですが、日本の大学生から問い合わせを受け、その文章力のなさ、問い合わせの仕方など、あまりにもレベルが低く驚いた時がありました。あえてその事には触れずに質問に対しての回答をしました。ただ準備不足の部分も感じられたのでその部分を指摘した所、大学生とは思えないつたない文章で、抗議を受けた経験があります。

海外では問題に対してダイレクトに指摘される場合が多く、その都度関係を切る様な行動をしていたのでは、ビジネス以前に相手と有効な関係を築けません。切るのは簡単ですが、状況を詳しく説明し、納得して頂く。この作業がコミュニケーション力です。その方はTOEICでは多少点数を取得している様でしたが、明らかにコミュニケーション力が欠落しているので、海外での活躍は難しい典型的な例と言えるでしょう。
 
一見日本語の能力と、英語は別だと思われがちですが、これは大きな誤りで、海外生まれや、帰国子女などの英語が母国語である人を除けば、我々日本人の母国語は日本語になります。基礎となる日本語で読解力や文章作成能力を持たず、円滑なコミュニケーションを行えなければ、第二言語である英語で意思疎通が出来るはずがありません。

現在の日本は国際化を急ぐあまり、日本人の弱点である英語教育に力を注いでいますが、まずは基礎である日本語教育を行い土台を固めないと、砂の上に城を築くような物で、その後に崩れ去ってしまう可能性も大いにあります。

またあたまでっかちの英語力をつけるだけではなく、現地にアジャストする柔軟さや、少々のことでへこたれないメンタルのタフさを鍛えるのが、海外でビジネスを行い、成功する上での、必要不可欠なパスポートになります。